nord lead 特長と魅力(中編)


出典:http://www.nordkeyboards.jp

バーチャル・アナログシンセのパイオニアにしてイノベーター、nord leadシリーズに関する2回目。
今回は、そのアナログ・エミュレーション、操作体系、機能性などを中心に言及してしてみよう。

初代nord leadのアナログ・エミュレーションは、明快な割り切りが功を奏した部分が多くあり、その操作体系のエミュレーションに於いても、奇をてらわず、欲張らず、アナログシンセの操作体系そのままであったことが大きなポイントである。
1995年当時のデジタルシンセの多くが有していた複雑な階層構造が、初代nord leadにはほとんど無く、その操作体系はアナログシンセそのものである。
結果、当時すでに当たり前のようにデジタルシンセに装備されていた液晶ディスプレイも初代nord leadには無い(nord leadシリーズで液晶ディスプレイを装備しているのは、nord lead 3のみで、それとて、液晶ディスプレイを見なくても音作りに際しては全く支障無い)。

nord leadは、その初代から、階層構造や隠しコマンドがほとんど無く、パネル上のツマミの設定が出音のほぼ全てとなる、簡潔明解な楽器に仕上がっていたのだ(マスターチューンや、UNISONモードのディチューン幅の設定など、SHIFTボタンを併用して設定しておく、いくつかの極浅い階層的な基礎設定はある。併せて、SHIFTボタンとLFO1のWaveformボタンを同時に押すと、各ツマミのパラメータ数値がLEDに表示されるという隠しコマンドがあり、設定数値を厳密に見たい場合には便利である)。

それは、当時の多くのデジタルシンセとは全く趣を異にする、極端にシンプルで素晴らしいものであった。
シンプルにすること、さらには、それを素晴らしいものにすることは、簡単ではない。
シンプルで素晴らしいものは、クリアなインスピレーションと明晰な思考からしか生まれないのだ。

nord leadシリーズは、他の要素に於いても、驚くほどシンプルかつ、実効的な操作性を有している。
高機能・多機能になるほど操作性は複雑になりがちだが、よくぞこんなにもシンプルで優れた解決策を思いついたものだと感心させられる操作方法が多々ある(良し悪しではないが、その機能整理と構築は、日本製のシンセサイザーとは大きく異なっており、それは個人的な資質の違いによるのか、文化圏的な違いによるのか、とにかく設計センスの違いを感じさせられ、おもしろく興味深い)。

4つのスロット構成で音色を管理できるのも、音作りでの比較や、ライヴでの音色の切り替えや積み重ねに、非常に有効である(この4つのスロットは、そのままパフォーマンス・モードでの音色構成の概念に直結している。同時にnord leadシリーズは、パフォーマンス・モードにしなくても、シングル・モードで充分説得力ある音がすることもまた確かであり、それは楽器として説得力ある音色を有している証左である)。

モジュレーションホイールに複数のツマミの任意の変化幅をアサインできる「モーフィング機能」も非常に有効で、その設定も簡単である(最新のnord lead 4では、その概念がさらに発展している)。
このモーフィング機能をアサインした音色でモジュレーションホイールを動かすと、劇的な音色変化をモジュレーションホイールのみで容易に操作でき、ライヴなどで非常に有効である。もちろん、あえて変化幅を小さく微妙にすることも容易に可能だ。
余談となるが、このモーフィング機能を駆使した際のnord lead 3のパネル上のLEDの動きは、パラメータの様々な変化が視覚的にも美しく楽しいもので、他のシンセでは味わえないnord lead 3特有な操作フィーリングを満喫できる。

初代nord lead・nord lead 2・nord lead 2X、これら3機種は、近似の方向性を持つ製品で、その内容は、初代→2→2Xへと有益なマイナーチェンジを施した、正常進化型のアップデート製品と言える。
実際、根本的な部分はほとんど同一であり、足掛け19年に渡って基本同一な仕様を踏襲して市場で現役の製品であった点からも、nord leadが初代から如何に見事な基本設計であったかが伺える。

初代nord leadと、nord lead 2には、可能ならPCMCIAカードによるメモリー拡張が、実用上は一層お薦めである。
拡張しないとメモリーのユーザーエリアは40種しかなく、それは現在はもちろん、1995年発売当時の感覚でもあまりにも少ない数で、nord leadシリーズは、そのコンセプトからして、プリセットをメインに使用するような楽器ではないので、なおのこと気になる点である。
無論、メモリー機能を持たない製品からしたら、40種も音色をメモリーできる、とも言えるのだが、シンセサイザーには、製品毎に、その設計コンセプトにふさわしい仕様・形態というものがあり、nord leadシリーズには、少なくとも128種以上のユーザーメモリー領域があることがふさわしく感じられるのだ。

しかし、初代nord leadでは、PCMCIAカードを使用するためには、オプションボードが必要であるし(事実上入手不可能に近いため、初代の中古を購入する場合は、このオプションボードが装着されているかどうか確認するのが良いだろう。オプションボードが装着されている場合、同時発音数も4→12音へと拡張される)、
さらには、PCMCIAカード自体が現在すでに入手困難であることから、初代nord lead・nord lead 2・nord lead 2Xの3機種の中では、ユーザーメモリー領域が297(99×3バンク)に拡張されるなどした、nord lead 2Xが機能的なバランスは最も優れたレベルにあると言える。
nord lead 2Xは、事実上、初代nord leadから地続きの基本仕様・コンセプトの最終進化形態と言ってさしつかえない。
パラメーターは2と完全互換で、2と2xはMIDIエクスクルーシヴでプログラムの移植も可能である。
出力回路のスペックも、nord lead 2Xが、24bit/96kHzのDAコンバーターを搭載し、最も高性能である(但し、この辺は、性能数値では劣る初代nord leadとnord lead 2も独特な味わいを持っており、楽器としては、一概に性能が劣るとは言えない)。


(初代nord leadとnord lead 2の操作パネル部分。グラフィックのニュアンスとパラメータの詳細は異なるが、そのモジュール構成は基本同一なのが判る。)

nord lead 3は、nord leadシリーズ中、一線を画する特異で素晴らしいUI(ユーザーインターフェース)と、独特な出音の質感を持つモデルであるが、その詳細は、あえて本稿には記さず、後編に詳しく記述する。

(nord lead 3の操作パネル部分。ロータリーエンコーダーとLEDによって、音色を呼び出す毎にその正確な位置を表示したり、モーフィング機能使用時や音色作成時にLEDがリアルタイムに動くさまは、非常に視認性に優れ美しく、シリーズ他モデルとは一線を画する。)

最新現行のnord lead 4 & A1は、 初代nord lead・nord lead 2・nord lead 2Xの正常進化版といった趣の、シンセサイザーとしてオーソドックスな方向性の構成やUIに戻っている。
同時に、単なるオーソドックスへの回帰ではなく、新機軸な機能も過不足無く盛り込んだ仕様となっている。
nord lead A1は、nord leadシリーズに於ける初めての機能簡潔版・廉価版とも言える製品だが、単なる廉価版とは大きく様相を異にし、非常に説得力があるシンプルな仕様を有しており、その簡潔さは、独自な魅力にもなっている。
いずれにせよ、最新機種は、しっかりと進化もしているのだ。

初代nord leadが、そのアナログ・エミュレーションの直接の手本としたのは、アナログシンセの非常にエポックメイキングな存在、Prophet-5である。
実際、そのモジュール構成は、Prophet-5とよく似ており、歴代nord leadシリーズに良い形で踏襲されている。
nord lead 2と3では、各モジュールのパネルデザインも、どこかしらProphet-5のそれを彷彿とさせる、角が丸みを帯びた長方形枠で描かれている(nord lead 2と3のデザインワークには、ミュージシャンとしても活動しているベルギーのデザイナーがグラフィック面で協力している)。

結果的に、その出音の多様性に於いても、Prophet-5を参考にしたことは有益であったと思う。
Prophet-5がそうであるように、nord leadもまた、ワンボディ構成の減算方式メインのシンセサイザーとしては、非常に多彩な音色を作ることが可能なのだ(nord lead 3に於いては、基本は踏襲しつつ、抜本的な構成の変更と独自化が計られており、そのサウンドメイキングの多彩さは、さらに拡張されている)。
この音作りへの基本的な指向性は、初代から最新の現行機種まで、一貫した特質となっている。

関連リンク

nord (KID=KORG IMPORT DIVISIONによる日本語ページ)
http://www.nordkeyboards.jp


 

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umaiyan ex

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