乃木坂46「制服のマネキン」

夏だ、『裸足でSummer』である。
2016年8月現在、乃木坂46のディスクレビューを書くなら、迷わず『裸足でSummer』にすべきである。
リリースされたばかりの最新シングル、さらには齋藤飛鳥が初センターを飾った楽曲『裸足でSummer』を、今紹介しないで、いつする?
林先生に叱責されそうな暴挙に出るのだ、私は。
今ここで、『制服のマネキン』なのだ。

これを書いている現在、日本は真夏、盛夏全開、『裸足でSummer』にピッタリである。
対して、『制服のマネキン』に描写された情景は、冬である。
さらには、リリースからすでに4年経とうとしている楽曲だ。

では、なぜ、その『制服のマネキン』を、今・・・?
ロジカルな理由など、無いと言えば無い。
しかし・・・!、あると言って語り出すのなら、いくらでも語るべきことが、この楽曲にはあるのだ。

まずは単純に、素晴らしい楽曲である。
作詞・作曲・アレンジ・歌唱・振付、その全てが、ピタリと揃い高度に融合しつつ、微かに絶妙に破綻した華麗なる破天荒感がある。
将棋で言うなら、詰めで競り勝った勝負ではなく、王手で勝った勝負、魅力がハッキリ際立った楽曲である。
この曲、このアレンジで、この歌詞を、あの子達に歌われて、勇気が出せなかったのなら、人間お終いである程だ。

そして『制服のマネキン』は、乃木坂46が世に処するにあたって、加速ブースター的な役割を果たした楽曲でもある。
乃木坂ロケット第2段目の点火だったと言ってもいい。
それまで乃木坂46をノーマークだった人々にも、おっ・・・!と感じさせ、振り向かせる力を、この楽曲は備えていたし、その魅力は失せることがない。
作曲の杉山勝彦氏、アレンジの百石元氏、両氏は共に、素晴らしい仕事を、この楽曲におさめている。

秋元康氏の作詞も、いつになくアンビバレンスな形式の魅力を強く放っている。
「恋をするのはいけないことか?」
「汚れなきものなんて 大人が求める幻想」
といったワードを、楽曲のサビに鮮烈にのせており、これを乃木坂46の女の子達が歌うさまは、一種のパラドックスである。
乃木坂46のアイドルとしての成り立ちから見ると、この歌詞が、如何に奇妙に、なおかつ強い力を備えているかが、逆説的に鮮明になる。
秋元氏は、こういった状況的なことも踏まえた、二律背反的な表現を、少なからず用いることがあるが、どこかしら、これが氏の本音ではないか・・・?、と思えることも、しばしばだ。

現在、オフィシャルのMVがショートバージョンの音質も良くない状態でしか公開されていないのが残念であるが、この動画も『制服のマネキン』のライヴでの魅力的なシーンを見せてくれている。衣装的にも夏の装いで、これはこれで可愛らしさはある(けれど、この曲の本質的な魅力は、可愛らしさとはちょっと違うところにあり、ダンスも奇妙にイビツな振付で、それを可愛らしい乃木坂ちゃん達がパフォーマンスするという構図にもまた、一種のパラドックスがあるのだが、この動画では幸か不幸か可愛らしさが前面に出ている)。

個人的には、『制服のマネキン』の魅力を的確・端的に伝えているのは、以前公開されていたオフィシャルのフルサイズかつ高音質なMVか、2013年元旦年明け深夜帯に18歳未満のメンバー不在でCDTVにて披露された白石麻衣センターバージョンの動画だと思う。残念ながら(そして無理もないが)現時点では、そのどちらもが無い。

『制服のマネキン』は、エポックメイキングな乃木坂チューンである。
実際、TVのメドレーやライヴなどで、この楽曲がかかった際の高揚感は今も独特なものがあり(それはファンの歓声などの反応からも判る)、欅坂46もカバーするなど、乃木坂46の楽曲群からピックアップする際に、頭一つ抜け出た強い印象を持った楽曲であることは確かだ。
楽曲から感じることや、その文脈的なことを、ザッと書いても、これだけのことが筆致できるのだ。

しかし、ここまで書いてきても、『制服のマネキン』の楽曲詳細に関して、くまなくは言及できていない。
あえて、それはべつの機会に譲り、この『制服のマネキン』にも顕著な特質、乃木坂46の楽曲群に、おしなべて共通して言えることを、最後に記そうと思う。
それは、乃木坂46の楽曲には、耐性が強いものや、その作曲家などの制作サイドにも注目が及ぶものが多くある、ということだ。
耐性の強さとは、こうして4年経つ楽曲が現在も愛されていることだったり、実際古びず魅力的に聴けることだ。
作曲家などへの関心は、例えば『制服のマネキン』を手掛けた杉山勝彦氏は、続くシングル『君の名は希望』の作曲者でもあるが、氏の作曲ワークは、乃木坂46の楽曲郡の中で、ファンの間でも存在感が高い、注目されるものとなっている。
杉山氏による楽曲にファンも期待し、その魅力を高く認めているのだ。
(惜しまれながら他界した名プロデューサー佐久間正英氏も、杉山氏の作曲ワーク、特に『君の名は希望』に注目言及していた。)
このような現象は、昨今のアイドルシーンでは、ありそうでいて、決して多くはないことなのだ。
今も古びない往年の「歌謡曲」が隆盛を極めた時代のニュアンスに、どこかしら通じる感もある。
SONYさん所属のグループだから、という見立ては安直だとは思うが、良い意味で、往年のSONYさんの「佳き歌謡曲」の香りに通じるものを見出すのは、筆者の深読みだけではないと思う。
そして、それは、プロデューサーである秋元氏が意図するところでもあるのではないかと思う。
乃木坂46と、その楽曲群には、どこかしら古典的なアイドルの王道感と、それを現代的に微かに逸脱する絶妙なニュアンスがあるように感じられる。

なにはともあれ、旧来のファンにも、新しくファンになった人々にも、一層じっくり聴いてほしい楽曲が『制服のマネキン』である。
ほかにもあるが、まずは、『制服のマネキン』である。

ディスクの紹介は、DVD付 Type Aにしておく。
理由は・・・DVDに収録された白石麻衣の苦手克服映像が、天空貫くほど可愛いからだ。
現在より、あどけない彼女の、しかし、現在とも変わらない不器用で確かな白石麻衣の素の魅力を、御堪能あれ。
キュン死は保証する。

■ 制服のマネキン / 乃木坂46(DVD付 A)
ディスク1(CD)
01. 制服のマネキン
02. 指望遠鏡
03. やさしさなら間に合ってる
04. 制服のマネキン(off vocal ver.)
05. 指望遠鏡(off vocal ver.)
06. やさしさなら間に合ってる(off vocal ver.)

ディスク2(DVD)
01.制服のマネキン [MUSIC VIDEO]
02. 指望遠鏡 [MUSIC VIDEO]
03. 安藤美雲 <苦手克服映像>
04. 生駒里奈 <苦手克服映像>
05. 伊藤寧々 <苦手克服映像>
06. 井上小百合 <苦手克服映像>
07. 川後陽菜 <苦手克服映像>
08. 斎藤ちはる <苦手克服映像>
09. 白石麻衣 <苦手克服映像>
10. 永島聖羅 <苦手克服映像>
11. 深川麻衣 <苦手克服映像>
12. 大和里菜 <苦手克服映像>
13. 若月佑美 <苦手克服映像>

関連リンク

乃木坂46公式サイト
http://www.nogizaka46.com/
乃木坂46公式ブログ
http://blog.nogizaka46.com/


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umaiyan ex

音楽制作ツールと自転車、そして、あらゆる音楽、アート、ポップカルチャーを愛しています。冨田勲と乃木坂46とPerfume(観客が数十人程だった時代からライヴへ通い続けています)への愛は現在ストップ高です。日曜深夜は乃木坂ちゃんから連続アニメまで、テレ東さんの魔力で眠れません。

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