ボーカロイドは、人々を魅了してやまない。
だがボーカロイドは、それひとつでは成り立つことができないだろう。
そんなボーカロイドの代名詞”初音ミク”をもって、オリジナル楽曲を制作するプロデューサー”keeno”(キーノ)氏の魅力に今回は迫りたい。
唯一無二の世界観を作り出し、ボーカロイドのムーブメントに大きく貢献した氏。
“keeno”を知ることは、ボーカロイドを知り、そして、”初音ミク”というアーティストを知ることにもつながるはずだ。
2010年…『鮮烈』
“keeno”氏のバックボーンは、大きく明らかにはされていない。
表すなら、ごく一般の市民、音楽好きである、といったところまでだ。
作曲には主にギターを使用している。
DTM音源と自身の奏でるギターの音、そして、ボーカロイドを合わせ、作品としているようだ。
表舞台に躍り出たのは、2010年6月のこと。
”初音ミクDark”(拡張音源バージョン)を使用したオリジナル楽曲『glow』を公開。
あまりに衝撃は大きかったようである。
公開から9日間という極めて短い期間で、VOCALOID殿堂入り(再生回数10万回突破した楽曲に贈られる称号)を果たし、同年9月にはコンピレーションアルバム『VOCALOID LOVESONGS Girl Side』に同曲が収録された。
この時点で”keeno”の発表した楽曲は『glow』のみだったというのだから、鮮烈というほかない。
“初音ミク”のプロデューサーとして、氏はたった1曲、10日足らずの時で、その地位を不動のものにしたのだった。
2013年…『シーンへ』
“keeno”氏は『glow』の発表以後も、コンスタントに楽曲を公開していった。
氏の奏でるギターは、アルペジオを中心としたいわゆるエモーショナル系サウンド。
楽曲もスローナンバーがほぼ全てを占め、時に冷たく、時に鋭く、聴く者の心を打つ。
そして、公開された楽曲は全てが殿堂入りを果たしている。
2011年には限定でミニアルバムをリリース。
イベント会場では数十分で完売し、追加分も全てがファンの手に渡り、店頭から姿を消した。
勢いはとどまることを知らず、2013年9月、フルアルバム『in the rain』でメジャーデビュー。
処女作『glow』や、同曲に続けて発表された『crack』『longing』などを収録。
ボーカロイドユーザーも、動画サイトの音楽制作者も、変わらず秘めた才能があることを、”keeno”は世に見せたのだった。
2015年より現在…『そして高みへと』
“keeno”氏の台頭が、”初音ミク”をはじめとするボーカロイドの一大ブームの、一つの原動力となったことは間違いない。
氏はインタビューにて、自分が製作を始めた時にはすでに流行っていたと語るが、更に人気の高まった現在を見れば一目瞭然である。
2015年9月には待望のセカンドアルバム『before light』をリリース。
製作にはかなりの苦しみがあったといい、度重なる延期の末にようやく完成したのだった。
その翌年、2016年12月には、3名の女性シンガーによるカバーアルバム『keeno song collection -feat. Female singer-』をリリース。
”JILLE”、”lasah”、”椎名へきる”という3色の個性を持つ歌手達によって、”keeno”の名曲が再演された。
ボーカロイドとの相性も素晴らしいが、譜面上でのクオリティの高さが、歌手とのコラボも可能とし、新たな可能性を感じさせてくれた。
“keeno”氏はボーカロイド楽曲をルーツとしながら、一人の音楽制作者、プロデューサーとして今、ここに成り立ったのである。
また、”keeno”氏は語る。作品を作り出すことは苦しい、と。
明るい感情を形にしたいと思うが、いつのまにか暗く物悲しい作品になってしまう。
しかし、偉大な芸術を作り出してきたアーティストは皆そう言う。
来年はもっと頑張るかも、と濁した発言も目立つが、『glow』 の輝きがそう易々と越えられるものではないことなど、イントロだけ聴いてもわかってしまうのだから、私達はただ、待つのみなのである。
耳に残るあのギターの音色。
そして、”初音ミク”の叙情。
“keeno”の世界は、あなたの心に強く響くことだろう。
関連サイト
keeno ワーナーミュージックオフィシャルページ
https://wmg.jp/artist/keeno/